英語を勉強する前に


社会人になって、「何かスキルアップしたいな」って考えた時に頭に浮かぶものの一つが英語だと思う。本屋でも専門のコーナーにありとあらゆる英語学習教材があふれている。ネットでもビジネスマンに英語は必須!なんて煽り文句もよく目にするし。その一方で、勉強を始めたはいいけど結局3日と続かずやめてしまうという話もよく聞く。私も中学高校大学と英語がずーっと苦手で社会人になって苦労しまくりながら勉強してようやく英語がある程度(仕事で使える程度)使えるようになったので、自分の経験から、英語が苦手な社会人が英語を勉強してみようかなーなんて考えた時、勉強を始める前にまずは考えておいたらいいかなと思う事を書いてみる。英語の勉強方法ではありません。勉強方法についてはネットや書籍、英会話スクールに方法論が山ほどあるのでそちらをご参照あれ。


1.その英語、本当に必要ですか?
あたりまえですが、英語に限らず勉強は時間と労力を必要とします。平日の日中は仕事があるし仕事の後はジムでトレーニングしたり飲んだりしたい、休日は彼女とのデートに合コン、最近始めたボルダリングも続けたい!と忙しい社会人には毎日1時間の勉強時間を捻出するのだって簡単じゃありません。英語は皆さん中学高校で勉強した経験もあるし、何となく汎用性も高くてとっかかりやすそうに見えるので、その勉強の先にあるものがはっきりしないまま「何となく英語ができると仕事の幅が広がりそうで」みたいな動機で始めがちです。ですが、その勉強、確実に挫折します。人間ってよほど強い動機に支えられた夢があるか、或いは反対にギリギリまで追い込まれでもしないと勉強しないのです。私もそうでした。英語の勉強を始める前に、勉強した英語を何に使うのか、本当にその時に英語ができないと死ぬのか、英語が必要とされる局面やビジネス機会がいつどういう形で自分に訪れるのか等々、できるだけ具体的に掘り下げましょう。TOEICを受けるにしても、何故受けるのか、何のために受けてそのためにはどの程度のスコアが必要なのか、をきちんと考えましょう。いくら掘り下げても具体的なイメージが思い浮かばなければ、今の貴方には英語は必要ないのです。「周りも勉強してるから」とか「英語くらいはできてないとマズイかなと思って」みたいな動機で時間と金をドブに捨てるよりは、そのお金で別の楽しい趣味を始めるか異性と旨い酒でも飲みに行きましょう。

2.どういう英語が必要か、イメージできてますか?
 一つの言語を本当に身につけようとすると物凄く大変です。私自身、生まれてから最も身近に使っている日本語ですら、知らない表現に出くわしたり読み手に伝わる文章を書くのに四苦八苦しています。ましてや大人になって日本語と言語構造が大きく異なる外国語を身に付けるのは至難の業です。日本語と同じレベルということであれば。
これは上記の1.に関係するのですが、自分にとって英語が必要となるシチュエーションが具体的にイメージできていれば、そこで必要な「英語スキル」が何なのか自然とはっきりしてくると思います。海外支店との会議に必要なのか、社内公用語が英語の企業に転職する予定なのか、英文の契約書を大量に処理する必要があるのかetc・・・。その用途によって覚える表現・語彙(ビジネス、社会科学、自然科学、医療、経理、法律・・・等)や鍛えないといけない能力(読解、ライティング、オーラルコミュニケーション、ヒアリング)とそのレベルが特定されてきます。全てを万遍なく母国語に近いレベルで身に付けることは難しくても、特定の分野の特定の語学スキルを一定のレベルまで身に付けるのは社会人になってからでも十分可能です。どういう英語スキルがどのレベルで必要なのかを把握し、漫然とではなく合目的的に勉強しましょう。

3.大学院留学で英語力は伸びません
 英語を勉強する人の中にはMBA等の大学院留学を目標に置いている人がいて、その中には大学院留学で英語ペラペラになる姿をイメージしている人もいるかもしれません。残念ですが、大学院留学で英語力は(思ってるほど)伸びません。大学院は英語を使って学ぶ場であって英語を学ぶ場ではないからです。専攻やスクールにもよりますが、特に大学院の場合は膨大な課題図書を読んでひたすらペーパーを書く、みたいな学業生活になるのでオーラルでの表現力やヒアリング能力は本人が意識して鍛えないと伸びません。また、ハーバードやコロンビア、スタンフォードといった有名大学の大学院は得てして日本人を含む留学生が多くネイティブとの会話の機会も思ったほど多くありません。アマースト、ウィリアムズといった少人数で留学生が少ないリベラルアーツ・カレッジの方が英語力という点では理想的な環境ですが、社会人になって大学の学部に留学するというのもあまり現実味がないので難しいところです。ただ少なくとも大学院は何か勉強したいことがある人が行くところであって、英語力を伸ばしにいくところではないことは言えます。


なお、以上は社会人を念頭に置いたものです。内定先からTOEICの点数提出を求められている大学生は含まれません。頑張って血反吐吐いて勉強してください。