報連相について

    ツイッターフォロワーシップについて何か書いて欲しいとリクエストがあったので,上司とのコミュニケーションの中心を占める「報連相」について,自分自身の経験を踏まえて書いてみる。極めて個人的な経験に基づく主観なのでどこまで汎用性があるか分からない。一応,若手社会人(1~3年目)やこれから社会人になる人達を念頭に置いているけど,所属している組織や置かれた立場,各人の適性によって受け止め方は様々かと思うので,何かの参考になればという程度で。

 

    「報連相」って社会人の基本動作として大事だとよく言われるし,自分が新人の時も色んな人から言われた。けど,これって実際にやるとなると難しい。上司はいつ見ても忙しそうだし自分も目の前に溢れかえった各方面から依頼された作業処理に追われていて,いったいどのタイミングで相談をして指示を仰げば良いのか分からない,そもそもこんなつまらないことを聞いたり相談して良いのだろうか・・・といった事を考えているうちに抱え込んで,〆切り間際になって上司から「あれどうなった?」と聞かれてアワアワしながら進捗を報告したら上司の求めるものと全然違っていて撃沈する・・・。自分も新人時代にこうした経験をしたし,今でもこの報連相は気を遣う作業の一つだ。奥が深いぞ報連相

 

 そもそも,報連相ってなんだろう。いや,言葉どおり報告・連絡・相談のことなんだけど,この報告・連絡・相談を「なんのためにやるのか」という観点から,業務フローに沿って改めて整理してみようと思う。


(1)連絡
仕事において何か起きたときにまず行うのは,上司や関係者に対する連絡(第一報)だ。その目的は情報共有であり,共有された情報に関し,何らかの対応が必要かどうか,必要であるとすればどのような対応があり得るのかを適時適切に関係者が検討し判断するためである。この連絡において留意すべき点は2点。①スピード感とポイントの明確化,②連絡する対象範囲(情報の共有範囲),である。

 

①スピード感と伝えるべきポイントの明確化
先に書いたとおり,連絡はそれだけで終わることはあまりなく,むしろその連絡を起点に新たな業務が発生することが多い。連絡が遅れればそれだけ初動が遅れ,その後の作業が後手に回り工程管理が厳しくなる。したがって連絡を行うにあたっては,案件によって多少の緩急はあるにせよ,基本的にスピード重視。用いるべき連絡手段もそのスピード感(緊急性)と即応性の要否によって変わってくる。2~3時間程度の余裕があるならメールやチャットで良いし,案件によってはたとえ深夜であろうと休日であろうとガンガン電話をかける必要も出てくる。
    と同時に,連絡を行うにあたっては,口頭であれ文章であれ伝えたいポイントを明確にすることが重要。連絡はその後の検討・対応に時間を割くという観点から,受信(理解)それ自体の時間・労力を出来るだけ短縮する事が肝要であり,ダラダラと要領を得ない伝え方のせいで受け手が質問を差し挟む,或いは2回3回と読み返さないといけないというのはその時点で連絡の趣旨を損なっている。こうした事態を避けるために,メールやチャットでの連絡にあたっては予めテンプレートを幾つか用意しておいても良い。その際,注意して欲しいのは,「その情報はどこからもたらされたものか?」を必ず明らかにすること。受け手にとっては,発信元によって情報のクレディビリティ評価や重みが変わってくる(=対応が変わってくる)のでそこは落とさない方が良い。

 

②共有範囲
    連絡を行うにあたって時に頭を悩ませるのは,直属の上司に加えてどの範囲まで共有を行えば良いのか,という点。これは,共有すべき情報の性質や共有先の人達との関係性に依るところもあるので,少しでも迷ったらまずは直属の上司に「相談」するべきなのだが,原則としてできるだけ広く共有するという考えで問題ないと思う。
    組織には大抵「俺は聞いてないぞ」おじさんがいて,そういうおじさんへの情報共有が漏れていると後々彼等が立ちはだかってめんどくさい事態になるケースが多い。そうした「聞いてないおじさん」の発生を事前に防いでおく観点から,自分が思っているよりも気持ち広めに情報は流しておくのが良い。情報を知って怒る人は殆どいないし,仮に扱いに細心の注意が求められるような機微な情報である場合には,連絡一つとってもそれなりのポジションにある者が行うのが相場だしそうべきであるからだ。若手がneed to knowの原則を気にするような情報に触れる機会は限られるので「共有先を絞った方が良いかな」というのはあまり気にする必要はない。心配であれば,予めリスト化しておいて直属の上司に確認しておいてもらっておくのも一案だろう。

 

 

(2)相談と報告
 報告は連絡と区別がつきにくいが,自分の中では,「連続性の有無」で区別している。つまり,連絡が多くの場合新たな事態や(なんらかの対応が必要となり得る)状況の変化等を伝達するのに対し,報告は,それ以前に行われていた作業やなんらかの案件が存在しており,それにかかる進捗や現況,結果について伝達するために行われるという点である。この違いが何に起因するのかというと,連絡の目的が情報共有に集約されるのに対して,報告の場合,純粋な情報の共有(結果報告)に留まらず,上司の目線から見て方向性に問題ないか,或いは作業に漏れや落ちが無いか確認すること(上司に連帯責任を負わせる)や,そうした確認を通じて必要に応じて新たな指示を仰ぐ(相談という形でマンデートを確保する)事まで場合によって含まれるためである。ここで「新たな指示を仰ぐ」と書いたように,報告はしばしば相談するための前振りとして行うものであり,その意味で相談とこの報告は本来セットで捉えるのが適切だと思う。
 このように報告は連絡と比べて目的に幅があることから,その目的によってどのタイミングで行えば良いのか,という問題が発生する。

 

①報告を行うタイミングと手段
    まず,目的が単なる結果報告の場合,業務が完了した時点で報告すれば済むのでタイミングについてはそれほど悩むことはないと思う。報告の手段についても,わざわざ電話で上司を拘束する程の報告案件はあまり想定されず,基本的にメールやチャットで良いと思う(上司のキャラによっては口頭での報告を求めるタイプもいるのでそこは上司次第というのはあるけど)。ただ,この手の結果報告は,行う側からすると業務が片付いた解放感からしばしば忘れられがちなのだけれど,報告を受ける上司からすると,その案件がクローズしたという情報は自身の業務管理や部署のマネジメントを考える上で大事な判断材料となるのでうっかり忘れたり間を置きすぎて報告すると意外と怒られたりする。
    一方,悩ましいのが,業務の進捗や途中経過の報告だ。これについては,その日〆の作業であれが午後前に一度報告しておくだとか,一週間の作業であれば2日目の終わり・4日目の終わりといったペースで報告するとか,それなりの相場観はあるのだと思うけど,そこは個別のケースによって様々なので,そうした個別のテクニックというより,ここではむしろ総論的な心構えに触れておきたい。

 

②報告・相談における主導権の確保
    先ほど報告と相談はセットで考えると書いたけど,業務の捉え方として大事なのは,上司から指示された作業や報告・相談をバラバラに考えるのではなく,まず作業を指示された時点でその作業の完了までの工程を意識する点。点としての作業ではなく,業務完了報告までの全体的な流れで捉えてその中で報告と相談をどう位置付けるか考える。指示されたら言われるがままやるという受け身ではなく,その業務全体を自分の案件と捉えて主導権を握る意識を持つ。指示を受けた時点で大まかなアウトプットのイメージと方向性,作業の〆切りを確認し,そこから工程を組んでどのタイミングで上司に報告・相談するかをイメージして作業に取りかかる。報告・相談において大事なのは,上司に「あれどうなった?」と言わせないこと,言わせるときは敢えてこちらの誘導で言わせるくらいの姿勢を持つこと。
    このように主体的に作業をハンドリングするためには,その作業が上司の指示の中でどのような位置付けにあるのかを知っておく必要がある。そのためには,上司の業務状況(どのような案件を抱えているか)と1日単位,1週間単位での仕事のリズム・繁忙サイクルを把握しておくことが望ましい。そうすることで,上司に報告しやすいタイミングも予めイメージしやすくなる。これまで何度かツイートでも触れているが,このように上司の状況を把握しておくためには,自分の目の前の作業に没頭するだけでなく,上司が誰と電話しているか,誰に何を指示しているか,更に上の上司や役員からいつどういう指示を受けているかといった,周囲の動きにも目を配り聞き耳を立てておく必要がある。
 
 大まかなイメージと方向性を事前に相談して上であっても,実際に作業に取りかかると色々と疑問や迷いが生じたり,どうしたら良いか分からないといった困難に直面することは普通にある。その場合,大事なのは,この相談はマンデートを得るためなのか,上司を巻き込むことで責任の主体を負わせることなのか,その目的を明確に意識することである。作業の主導権を確保する観点からは,上司になんでも丸投げ相談するようなやり方は極力避けるべきであり,可能な限り広く裁量を維持しておくことが望ましい。指示を受けた時点で大まかなアウトプットのイメージや作業の方向性を確認しておくのも,後々の手戻りを防ぐという意味もさることながら,自分の裁量で泳ぐスペースを確保しておくという意味もある。そう考えると,「AかBか」「●●をやる/やらない」といった単純な「イエス/ノー」クエスチョンについては予め自分なりの方向性を持った上で相談に臨むべきであるし,単純なファクツの確認はあまり構えた相談という体をとらずサクッと聞けば良い。初めての業務や入社して間もないうちはとにかく少しでも疑問に思ったことは上司に相談した方が良いが,いつまで経ってもそれでは重要な作業を任せられなくなる。後々事故にならない限度を見極めつつ,自分で泳ぐ余地をどう確保するか,その判断が肝となる。そうした判断を的確に行う助けとなるのが,先に述べたような上司の普段の動きをウオッチしておくことだ。
 一方,アウトプットのサブスタンスに係る事情変更の発生であるとか,関係方面との調整で自分よりエライ人から横車を押されたりであるとか,自分の裁量を明らかに越えた問題が発生した場合は躊躇せずにマルッと上司に投げてしまえば良い。ここで変に「自分でなんとかしないと」と抱え込まないこと。余裕があれば,自分なりにどうすれば良いか考えて上司に披露しても良いが,そのために時間を過剰に費やすのは本末転倒。ぐずぐずと抱えて悩んでいても決して事態は改善しないしむしろ悪化していく。さっさと上司に相談して責任を負わせるべし。

 

 私の好きな言葉に「プロセス管理の巧拙は時にサブスタンスの良否を凌駕する」というものがある。そのプロセス管理の要となるのが報連相だと思っていて,以上,長々と報連相の意味とその扱い方について書いてきたわけだが,これらを自分が若い頃にきちんと出来ていたかといえば全然出来ていなかった。ってか,今も出来ているか怪しい。その意味で,この記事は若き日の自分の無能さへの懺悔であり反省文といってよい。当時の上司の皆さん,ごめんなさい。